カッコイイシステムトレード
利益率の低い使い捨て商品での競争から見ても、同社は企業として成熟期に入っている。
低成長の消費関連企業として、買収対象にはもってこいだ、という認識である。
一九八一年から八五年の問、税引前の売上利益率は九%から二%の聞に低迷していた。
株主資本利益率は二O%前後とかなりの水準だったが、それ以上に改善する気配はなかった。
収益の伸びも同様に期待が持てない。
一九八一−八五年の年間利益は五・二%の成長を示してはいるものの、売上げは一%にも満たない伸びで、要するに、同社は停滞の淵にあるように見えていた。
この間、Mは、四度の買収攻勢をはね返した。
なかでも一九八八年のコニストン・パートナーズとの激烈な闘いは、その頂点と言っていいだろう。
J社は、株主投票で五二%という際どい票差で辛くも勝てたのである。
ただ、そのときに自社株を一九OO万株、一株当たり四五ドルで買い戻さなければならなかった。
機関投資家の持株比率は五五%から三五%に落ちた。
一九八六年から八八年にかけて、同社では、一五億ドルの自己資本が借入金に代わり、短期間ではあったが純資産がマイナスに転じている。
この時点でPは、J杜の取締役で友人のジョセフ・シスコに電話して、Pから必要な資金を提供しようと申し入れた。
同社は一九八九年七月に転換優先株を六億ドル発行し、Pがそれに応募した。
同社は、その代金を債務の返済に回すことができた。
優先株の条件は、金利八・七五%、一O年後の償還というものであった。
同社のか普通株に時価の二O%上の五0ドルで転換できる。
というオプション付きである。
「Jのビジネスは、われわれが好む類いのものだった。
Cと私は、同社の業況を理解していると考えていたし、だから将来についても、妥当で、理性的な予測ができるものと確信していた」とPは述べている。
一九八九年に彼は同社の取締役に就任。
同年、。
センサー。
が発売された。
この二つは、同社にとっては、利益になった偶然の符号と言えるだろう。
この転換優先株には二年間は普通株に転換できないという条項があった。
ただ、会社側は、普通株の株価が少なくとも二O営業日、連続して六二・五0ドルを超えた場合は優先株を償還し、普通株に転換することを強制できる、という権利を留保していた。
。
センサー'発売後、同社の業績は急上昇した。
一株当たり利益は、年率二O%の成長を示し始め、税引前の売上利益率は一二%から一五%へと向上、株主資本利益率は四O%に達した。
これは一九八0年代初期に比べて二倍の率であった。
一九九一年、同社は一株を二株とする株式分割を発表した。
そのときの株価は七三ドル。
これは六一了五0ドルを上回り、それを二O日以上連続していたので、Pの優先株の償還も発表した。
Pはそれに応えて償還に応じ、発行済株式数の二%に当たる普通株一二OO万株を受け取った。
二年足らずの聞に、Pの六億ドルの投資は、八億七五OO万ドルに増えていた。
配当金を含めると四五%の増加であった。
こうして、Pは、八・七五%配当付きの優先株でなく、当面の利回り一・七%の普通株の株主になった。
J杜に対する投資は、今や確定利付きで値上がりも期待できる証券ではなく、株式投資そのものということになった。
もしPがその普通株を持ち続けるとすると、Pは、それがよい投資かどうか確認しなければならない。
われわれにはPがJ社についてよく知っていることはわかっている。
また、同社の長期業績予測も良好である。
株主資本利益率、売上利益率など、財務の状況は改善してきている。
製品価格を上げることができる力を持つということは、株主資本利益率を平均以上にできることを意味する。
そしてそれは同社が持つ経済的のれんの増加をもたらすものであろう。
Mは、長期負債の削減を企て、株主持分の価値を高めようと努力を続けた。
早く言えば、同社は、株式投資の対象として必要な条件のすべてを備えてきたのであった。
今や、Pにとって必要なことは、同社の価値を見定めること、それによってJ株は割高ではないと自分を納得させることだった。
一九九O年のJ社のオーナー収益(純益+減価償却費|資本支出)は、一九八七1九O年の間に、年率一六%増加して二億七五OO万ドルだった。
企業の成長性を完全に占うには短期間過ぎるが、それでも何らかの推計を始めることはできる。
事実、一九九一年、Pは、同社をK社と比較して、「KとJは、世界で二つの最優良企業である。
今後、何年もの問、高率の利益成長を続けると予想する」と書いている。
一九九一年初めの三O年物国債の利回りは八・六二%。
同社の価値を計算するには、控えめに九%の還元率を使うべきだろう。
ここではPが、還元率に株式リスクのプレミアムを加えないことを銘記しておくことが重要である。
K社と同じく、J社の利益の成長率が割引率を超えることが予想されるので、ここでまた二段階の還元モデルを使わなければならない。
仮りに、年率一五%の利益成長が一O年続き、その後は五%になるとする。
一九九O年のオーナー収益を九%で還元すると、J杜の価値は約一六O億ドルということになる。
もし、将来の成長率予想を二一%に下げれば約二一六億ドル、一O%なら一O八億ドル、七%だと八五億ドルという計算になる。
一九八四年から九O年にかけて、J杜の株価は、年率平均二七%上昇した。
一九八九年には四八%上がっている。
そして一九九O年、Pが優先株を普通株に転換した年、株価は二八%上がった。
一九九一年二月、株価は過去の最高値七三ドル(分割前)をつけた。
当時の発行済株式数は九七OO万株。
Pの転換によって、これが一億O九OO万株に増え時価総額は八O億Oコ一OO万ドルであった。
オーナー収益の成長をどう見るかによって、転換時の時価総額は、価値の五O%以下(一五%成長)、三七%以下(一二%成長)、二五%以下(一O%成長)となり、もし成長を七%と見ると八五億ドルという計算になり、ほぽ当時の実際の時価総額と等しいことになる。
しかし、いずれにしても一九九一年のJ株は、推定価値に比べて割高ではなかったのである。
一九九二年末に、J杜の株価は五六ドル(分割前の三一ドルに当たる)に達した。
Pの未実現値上がり益は七億六五OO万ドルとなり、六億ドルの投資について一二七%の利益をもたらしたことになる。
一九八八年から九二年の聞に、J社の時価総額は九三億ドル増加した。
この間の利益は合計二ハ億ドルで、そのうち五億八二OO万ドルを配当し、一O億二00万ドルを再投資のために留保した。
留保した一ドルついて、時価総額は九・二一ドル増加したことになる。
この平均を超える実績は、J社の株価に影響を与えた。
同社のカミソリ刃のビジネスは、グローパリゼーションの好影響を最も多く受けた企業と言えるだろう。
発展途上国での売上げ増はコ一O%で、インド、中国へと販路を拡張することによって、この成長率は維持されるだろう。
発展途上国での売上利益率は、米国内での四O%には及ばないものの、全社平均の二O%に近い率である。
通常、利益率の低い低価格製品から参入し、時間の経過につれて利益率の高い、改良型を紹介していくという方式が使われる。
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